住宅街に突如現れる
110年の時を刻む「宮造り」
JR三河島駅から徒歩約7分。下町の入り組んだ路地を抜けた先、圧倒的な存在感を放つ建物が現れます。
大正5年(1916年)創業。110年という気の遠くなるような歳月を刻んできた「帝国湯」。かつて休業の危機に直面しながらも、地域の人々の想いに応えるようにして復活を遂げたこの場所には、銭湯という枠を超えた「奇跡の歴史」と「想い」があった。


心奪われる
美術館のような脱衣所と浴室
脱衣所にはいると視界を奪うのは、高い天井に広がる、見事な職人技で造られた格天井(ごうてんじょう)。
その奥に見えるのが、富士山のペンキ絵。故・早川利光絵師によるダイナミックな富士山。そして脱衣所から眺められる池のある庭は都会の喧騒を忘れさせてくれる静寂をもたらす。
「このままでいい、このままがいいの」と話す番頭の石田あやこさん。
新しいものへ変えるのではなく、古いものを慈しみ、維持していく。
その信念は、100年以上続くこの建物の全てに浸透している。



都内屈指の
「熱湯」と「伝統の薬湯」
この銭湯の名物と言えば、その熱―いお湯。45℃〜47℃の湯もあり、“熱湯ファン”を唸らせる温度を保っている。江戸っ子スタイルの真骨頂とも言えるこの熱さは、薪で沸かした地下水だからこその、肌当たり。柔らかく湯冷めしにくいのが特徴。
そして伝統の薬湯も人気。漢方の香り漂う真っ黒な薬湯で、こちらは40℃前後とぬるめ。熱湯が苦手な方も安心して楽しめる。

残す歴史、継ぐ人情。
帝国湯には、戦争の被害にあった樹木や屋根を敢えてそのまま残してある。それは、ここが歩んできた時間を忘れないための証。
残す歴史もあれば、継ぐ人情もある。
一人で来た人には「裸で縁側でもどうぞ」と声をかけ、湯船の入り方に迷っている人がいれば「この辺がちょうどいい温度だよ」とアドバイスを送る。脱衣所には常連客の銭湯セットが自己責任で置かれていたり、常連客が使用しないものをリサイクル品として持ってきて「ご自由にどうぞ」と書かれ置かれている。
それは、この銭湯でずっと受け継がれてきた“温かい下町のおせっかい”。親切の極みとも言えるその触れ合いが、訪れる人の心を解きほぐしている。



受け継がれる“湯”と“人情”と
「お湯を守るのは男の仕事だけどね」と話すのは、生まれも育ちもこの場所である、あやこさん。父が釜場を守り、母が番台を守る。小学生の頃から学校帰りに掃除を手伝い、番台に立ってきた石田さんにとって、ここは家族の愛が詰まった場所。
5代目オーナー亡き後、仕事をしながら夜の運営を支えた兄の想い、そして再開した時に常連さんがかけてくれた「あやちゃんが開けてくれるなら安心だね!」という言葉、そのすべてが、今の帝国湯を支えている。
「お客さんは家族のよう。家にいるより、ここで気晴らしした方がいいでしょ!って思う」。番台での悩み相談や、常連さんが新しい客に「掛け湯」を教える姿。店主から客へ、客から客へと連鎖する人情を感じることができる。


男女脱衣所を分ける中央の壁の突き当りには、堂々と掛けられた歴史ある大きな柱時計がある。
長く“帝国湯の時”を刻んできたこの時計は、今も毎日、人の手でゼンマイを巻いている。
明日もまた、皆に愛される“帝国湯の時”を刻むことを続けるために。

住所 : 東京都荒川区東日暮里3-22-3
電話番号 : 03-3891-4637
営業時間 : 15:00 ~ 22:00
定休日: 月曜日(祝日の場合もお休みが多いです)
入浴料金 : 大人 550円(東京都一律料金
アクセス : JR常磐線「三河島」駅より徒歩7分
設備 : 薬湯、気泡風呂、超音波風呂、立ちシャワー、庭園あり